Web3ゲームにおけるネットワーク効果：ゲームプラットフォームはどのようにトークンインセンティブを通じてネットワーク効果を強化するのか？

執筆：HIRAYAMA SHO

編纂：鹿鹭 路，SeeDAO

イントロダクション

私たちはAnimoca Brandsの研究チームと協力し、Web3ゲームにおけるネットワーク効果について研究を行いました。Web3製品のネットワーク効果に関するより具体的な仮説を提案し、以前の論文で発見した製品とトークン経済学の密接な関係を出発点としています。

全体として、Web3製品が直面している問題の一つは構造的な課題であり、これがネットワーク効果の発揮を制限しています。特に注目すべきは、DeFiとWeb3ゲームがネットワーク効果とトークン経済学の面で異なるルールを持っていることです。

ブロックチェーンゲームがネットワーク効果から遠ざかる進化

ブロックチェーンベースのゲーム（以下、GameFi）は登場してから約5年しか経っていませんが、NFTの使用、報酬再分配メカニズムによる投機需要の創出、より持続可能なメカニズムなど、さまざまな革新を遂げています。

その便利でユーザーフレンドリーなインターフェースと体験、金融的インセンティブにより、Axie InfinityやSTEPNのユーザー数は爆発的に増加しました。しかし、単に投機需要に依存する製品の持続可能性には問題があり、彼らの後続製品はより健康的なトークン経済を実現するために、できるだけ投機依存を排除しようとしています。

ここではこの変化の利点と欠点について議論しませんが、投機的性質を完全に排除することは、GameFiの最大の利点の一つである「パブリックチェーンを通じたグローバルネットワークとの接続」を弱めています。投機はネットワーク効果を生み出さず、持続可能性もありませんが、すでにグローバルな現象となっています。さらに、DeFiとは異なり、既存のほとんどのゲームは相互運用性を持たず、人々の相互作用は主にゲームコンテンツを通じて実現されています。そのため、GameFiはWeb2ゲームの劣化版になりやすいのです。

どのようにして、ユーザー体験に影響を与えずにトークンを配布し、顧客獲得コスト（CAC）がユーザーライフサイクル価値（LTV）を下回り、閾値を超えた後に自律的に成長する製品を創造できるのでしょうか？答えはネットワーク効果です。

ネットワーク効果（Nfx）とは、製品やサービスの価値がその使用者数の増加に伴って増加する現象を指します。製品のユーザーが多ければ多いほど、その価値は大きくなります。

ネットワーク効果について議論する際に注目すべきは、ネットワーク効果には物理的効果、プロトコル効果、プラットフォーム効果、パフォーマンス効果など、さまざまなタイプがあることです。詳細についてはこの記事を参照してください。異なるネットワーク効果は、タイプ、カテゴリ、段階によって異なる特性を持っています。例えば、古典的な電話は物理的ネットワーク効果から利益を得る例であり、ユーザーは同じネットワークを使用している他の人にしか電話をかけられません。もし一人の人が単一のネットワークを通じて連絡を取りたい全ての人に連絡できるなら、二つの電話ネットワークは無意味です。なぜなら、単一の電話ネットワークの使用が増えることで、そのユーザーに対する価値が直接的に増加するからです。その効用は直接的であり、日常生活で使用する際には物理的な端末と回線が必要であり、切り替えコストが非常に高く、競合他社は同じまたはそれ以上の効用を提供するために10倍以上の効率を持つ必要があります。

ゲームの例を挙げると、ユーザー数が増えるにつれてマッチングにかかる時間が減少し、共通の話題が増え、デジタル空間において仮想社会が創造され、各ユーザーの楽しみも増加します。

Web2ゲームにおけるネットワーク効果（Nfx）を促進する要因は？

従来のゲームやテクノロジー分野、Web2時代において、ネットワーク効果（Nfx）に影響を与える主な要因には、製品の使いやすさ（ease of use）、品質（quality）、ブランド認知度（brand recognition）、臨界規模（critical mass）、補完製品（complementary goods）、切り替えコスト（switching costs）があります：

• 製品やサービスの使いやすさと高品質は、自然により多くのユーザーを引き付け、保持します。これらの利点は口コミでより早く広がります。
• ブランドの認知度は、ユーザーが親しみや信頼を持つブランドの製品やサービスを使用し、話題にする傾向があるため、ネットワーク効果に貢献します。コカ・コーラの強力なブランドは、その成功に寄与しており、消費者は自然にその製品に対してより良い認識と記憶を持ち、製品の拡散を助けます。
• 臨界規模 ------ ネットワークが他の潜在的なユーザーに対して魅力的になるためには、一定の活発なユーザー数に達する必要があります。これにより正のフィードバックループが形成されます。臨界規模に達すると、より多くのユーザーが参加することで、そのネットワークは急速に成長し、広く採用される可能性があります。例えば、FacebookやTwitterのようなソーシャルメディアプラットフォームでは、十分な数の友人や家族がこれらのプラットフォームを使用している場合、ユーザーにとってはより価値があり、面白くなります。
• 補完製品 ------ 特定のネットワークやプラットフォームと共に使用される製品やサービスを指し、ネットワークをより魅力的にし、ユーザーを引き込んだり保持したりします。これは、特定のオペレーティングシステム向けに設計されたアプリケーションを開発するソフトウェア開発者のように、システムにさらなる価値を加えます。
• 切り替えコスト ------ ユーザーがあるネットワークから別のネットワークに切り替える際に発生する財務的または非財務的なコストを指し、これによりユーザーは競合ネットワークに切り替える可能性が低くなり、特定のネットワーク内での有形および無形の投資を放棄することに対してますます不安を感じるようになります。

Web3ゲームはネットワーク効果の利点をどのように活用すべきか？

Web3ゲームは通常予算が限られており、インターフェースやユーザー体験が十分でないため、ユーザーを引き付けるためにパブリックチェーンの独自の機能を最大限に活用する必要があります。そのため、同じカテゴリに属していても、Web2ゲームとWeb3ゲームのビジネスモデルは異なります。

この方向性をより深く探るために、離散メカニズムを持つオンチェーンゲームをサポートするゲーム向けのアプリ/ドメイン特化型のロールアップを考えてみましょう（すべてのデジタルゲームは技術的には離散的ですが、ここでは「実際に離散的なゲーム、例えばカードゲームやボードゲームに焦点を当て、シューティングゲームやリアルタイムストラテジーゲームではありません）。

完全なオンチェーンゲームは、すべてのゲームロジックをブロックチェーン上に保存します。ゲームロジックをオンチェーンで処理する理由は、情報の透明性とプラットフォームの公平性を高めるだけでなく、コアコンポーネントをオンチェーンに保存することで、そのロジックが相互運用性と組み合わせ可能性を持つからです。ここでは、ゲーム行動を表現するために必要なオンチェーン取引の数が限られており、制御可能であるため、離散メカニズムを持つゲームに焦点を当てています。さらに、zk技術のおかげで、特定の情報を隠す必要があるポーカーのようなゲームをサポートできるようになりました。

このロールアップソリューションには、ゲームクリエイターを支援するための組み込み機能があり、ランダム数生成、情報隠蔽、ユーザーのパフォーマンスに基づく評価、オンチェーン活動の可視性が含まれています。ある地域でゲームが十分なユーザー数を獲得すると、その地域でネットワーク効果が形成され、他の地域に拡大することでユーザー数を増やすことができます。同期ゲームの場合、同じタイムゾーンのユーザーのみがネットワーク効果に影響を与えますが、ユーザー数を増やすことでより大きな利益を得るゲーム制作者には地理的制限はありません。

ゲーム制作者、ストリーマー、トーナメントオーガナイザーは、自身のパフォーマンスに基づいてロールアップのネイティブトークンを獲得します。彼らはネットワーク効果への貢献に対して報酬を受けるべきであり、単にゲームをプレイすることだけではありません。

製品にさまざまなネットワーク効果を組み込む重要性

Web3プロジェクト、特に非DeFiアプリがスケールアップまたは自己維持（またはその両方）を実現できない主な理由は、製品面にあります。多くの人が持続可能なトークン経済モデルに注目していますが、実際に重要なのは製品そのものです。Web3ゲームはWeb2ゲームの機能の大部分を実現できますが、予算の違いやユーザーインターフェースと体験の制限、トークン統合の不合理な設計により、かなり「弱体化」しています。

nerf = 弱体化（通常はゲームのバランス調整に使用される）

多くのWeb3ゲームはネットワーク効果を持たないか、上図の緑の線のように限られています。緑の線は収束ネットワーク効果を示しています。この効果は最初に明らかな効用の増加を生み出しますが、すぐにある値に減少します。例えば、ある地域のユーザー数を増やすことでマッチングにかかる時間が減少します。10秒から1秒への効用の増加は明らかですが、1秒から0.1秒への減少は効用の大幅な増加をもたらしません。製品の価値はその効用の上限に依存します。

一方、青い線は、地理的にスケーラブルな製品、トークン標準、複数のゲームを含む包括的なエコシステムを構築するために必要な取引フォーマット、オンチェーンゲームロジックを構築するためのツール、シームレスなユーザー体験を提供する新しいタイプのウォレットによって形成されるネットワーク効果を示しています。これらの措置は短期的に爆発的な成長をもたらすことはありませんが、複合的な方法で機能します。

複数のネットワーク効果を単一の製品に統合することで、初期の立ち上げと長期的な成長を実現できます。例えば、前述のゲームの業界特化型ロールアップオペレーターは、最初に自分のゲームを作成し、トーナメントを組織する必要があります。しかし、ユーザー数が増えるにつれて、コミュニティが形成され、ゲームの待機時間が短縮されるだけでなく、より多くのユーザーが運営者の代わりにゲームを作成し、トーナメントを組織することを望むようになります。

Web3ゲームにおけるネットワーク効果の事例

$MAGICがTreasureDAOエコシステムで発揮する魔法の力

現在のWeb3ゲームは、プラットフォームを通じてネットワーク効果を活用するのが難しいと感じています。Axie InfinityやSTEPNのような人気ゲームは、ネットワーク効果に関する露出が非常に限られています。しかし、暗号ゲームプラットフォームが複数のポータルを作成し、単一のトークンで複数のプレイヤーグループをターゲットにすることで、状況は変わり始めています。

TreasureDAOは良い例であり、彼らの$MAGICトークンはユーザーがArbitrum上で分散型エコシステムのいくつかのメタバースプロジェクトに参加することを可能にします。プラットフォーム上の異なるプロジェクトが$MAGICを経済的に活用し、相互に接続されているため、各ゲームは補完製品として機能し、TreasureDAOエコシステムに価値を加え、ネットワーク効果の出現を見始めることができます。

TreasureDAOは、ユーザーに無料のゲーム資産を提供することでコミュニティを構築し、より多くのプレイヤーを引き付け、最終的に必要な臨界規模に達するために、ボトムアップのアプローチを採用しています。開発者はゲームを開発する際に、文化的側面の開発にも非常に重視しています。

アーティストと開発者はコミュニティリソースを最大限に活用でき、プレイヤーは強化されたゲーム体験を享受できます。$MAGICの設計は、異なるゲームのプレイヤーを同じコミュニティに接続し、プレイヤーは$MAGICを使用して異なるゲーム間で資産を交換できるため、この相互運用性も強力なネットワーク効果を発揮します。さらに、強化されたメタバース体験はより多くのユーザーを引き付け、さらなる開発者を呼び込み、より良い体験を提供するなどの循環が続きます。このようにして、この循環はエコシステム全体の発展に寄与します。

$MAGICエコシステムプロトコルには、Bridgeworld、Smolverse、Tales of Elleria、The Beacon、Battlefly、The lost donkey、Toadstool、Knights of the Ether、LifeVerse、Lost Samurise、Realmが含まれています。

上の図のように、TreasureDAOのエコシステムは「一代币多游戏结构」において良好な潜在能力を示していますが、新しいゲームからのDAU（日活跃用户）の流入は、旧ゲームユーザーの減少を補うのに十分でなく、自己成長を保証するものではありません。これは、エコシステムがまだ完全に自己持続可能な発展を実現していないことを意味します。

Animoca Brandsは、自身のネットワーク効果を利用して、流動性プールの共有やプロジェクト間のトークン報酬を通じて、ポートフォリオ内の多くのプロジェクトを相互に接続しています。その中で、Animoca Brandsが支援する最初のNFTシリーズ「Mocaverse」は、この協同効果を示しており、Animocaエコシステム内の他のプロジェクトや子会社の複数のコミュニティを統合することで、その価値を高めています。

上記の例に加えて、ネットワーク効果はEVM経済モデルの領域やツールにも見られます。例えば、プログラミング言語、開発ツールキット、ノードサービス、トークン標準、トークン発行、ツールなどです。新しいEVMチェーンを作成すると、分散接続された相互運用可能なエコシステムが形成され、製品のマルチチェーン展開、他のチェーンでのインフラの活用、開発者の異なるチェーン上での潜在顧客の増加など、一連のポジティブな効果が生まれます。

EVM互換のLayer 1の実装が水平にスケールするのに対し、ロールアップに基づくEVM互換のLayer 2は縦にスケールします。プロトコルレベルの経済モデルは異なりますが、ゲームなどのアプリケーションレベルにおいては、どちらも同様に効果的です。さらに、各チェーンやロールアップは特定の地域や異なるユーザーの観念において強い影響力を持っているため、Uberが他の地域に同じサービスを拡張するために使用するのと同じ戦略を用いてネットワーク効果を強化できます。

未来のトークン経済モデルの展望

特定の段階または目標に対するトークンインセンティブ

DeFiやGameFi製品が市場に流入する中、管理チームはユーザー群を構築する機会を見つけ、徐々に成長するネットワーク効果から利益を得る必要があります。一般的な方法の一つは、初期ユーザー群の参加を促すために段階的なトークンインセンティブを採用することです。

これらのインセンティブプログラムでは、製品がより広範なオーディエンスを引き付ける段階に成熟するまで、初期ユーザーの積極性を十分に引き出すために適切なバランスを保つことが重要です。この期間中は、経済モデルの持続可能性に関連する問題を避けるために、トークンインセンティブを慎重に管理する必要があります。

多くの人が異なる意見を持つかもしれませんが、特定の製品カテゴリは過度に分散化する必要はなく、トークン設計も不変であるべきではありません。例えば、固定のトークン発行計画は、管理チームが変化する環境に応じて戦略を変更できなくすることを意味します。一部の新興DeFi製品とは対照的に、これらの製品は初期段階で固定の予算をトークンインセンティブとして配分し、ユーザーを引き付けるために料金を支払ったりアイテムを購入したりすることを条件とし、得られた資金を国庫に転送します。

ゲームプラットフォームにとって、DeFiが提供するより多くの種類の実用ツールが必要であるため、プラットフォームの発展に応じてトークンインセンティブメカニズムを調整する必要があります。最初は、流動性トークン報酬を通じてゲームプレイやコミュニティの協力を促進できます。プラットフォームが成長するにつれて、安定したエコシステムを維持するためにこれらの報酬を調整することが重要になります。

ゲームライフサイクルの後続段階で代替戦略を探ることで、管理者は異なる規模のトークン報酬（または完全にトークンベースの報酬に依存しない）を通じて、競技への参加、革新的なゲーム開発、激しいランキング競争を促進できます。

ネットワーク効果の小規模から大規模への進化

タイトルが示すように、より多くの小規模ネットワーク効果を活用するには、戦略を策定する必要があります。例えば、Uberがある都市で一定数のドライバーを持つと、さらにドライバーを増やしても得られる利益は小さくなります。したがって、まずネットワークを拡大して小規模ネットワーク効果を実現し、その後いくつかの小規模ネットワーク効果を通じてより大規模なネットワーク効果を促進し、プロジェクトの持続可能な発展を確保する方法を理解する必要があります。

この傾向は、複数の小型ネットワークの水平拡張モデル（Uber、Tinderなど）や、単一の大型ネットワークの縦の拡張モデル（電話、身分証明など）で見られます。

この傾向はGameFi分野でも明らかであり、Axie InfinityやSTEPNが試みたように、各ゲームに特化したトークンインセンティブを通じて段階的なネットワーク効果を推進しています。それに対して、TreasureDAOはプラットフォーム内の個々のゲームの小規模ネットワークを利用して、プラットフォーム全体のトークン（$MAGIC）エコシステムの拡大を促進しています。

暗号通貨業界において、初期のネットワーク効果を引き出す別の代替方法は、そのコミュニティに存在します。企業がトークンインセンティブを通じてゲームの主要なプレイヤーベースを拡大する際、GameFi企業は既存のコミュニティを利用して、小規模から大規模へと徐々に拡大する青写真が生まれます。これにより、GameFi企業はネットワーク効果の利点を迅速に蓄積し、最終的には製品を拡大する新しい道を提供します。

この点は、Yuga Labsが近日中にリリース予定のLegends of Maraゲームにおいてもよく表れています。彼らはゲーム内でOthersideシリーズのNFTを使用しています。以前、Yuga LabsはBored Ape Yacht Clubやその後のシリーズを通じてコミュニティの強力な支持を得ており、これを利用してLegends of Maraの初期ユーザーベースを構築し、ネットワーク効果を通じて最終的にその影響力を拡大しています。

したがって、成功する製品を作成するためには、どのような規模のネットワーク効果を得るかを考慮する必要があります。製品の持続可能な発展のためには、ガバナンスとトークン発行は柔軟であり、不変のトークン設計の旧モデルとは異なる必要があります。

まとめ

疑いなく、Web3ゲームには巨大な潜在能力があります。しかし、管理者はネットワーク効果を最大限に活用して効率的な成長を実現し、同時に持続可能なトークン経済学が長期的な成功にとって重要であることを忘れてはなりません。既存のWeb2プロジェクトの成功事例や、彼らがネットワーク効果を巧みに利用して運営規模を拡大した方法は、貴重な経験と教訓を提供します。GameFiが進化し続ける中で、正しく実行されれば、ユーザーに実質的な利益を提供するでしょう。

したがって、製品所有者にとって、ネットワーク効果を通じて卓越した拡張を実現するためには、強力なコミュニティと適切なインセンティブに基づいたゲームの設計が重要です。